「ガラスのブルース」に宿る、覚悟と絶望の向こう側

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さて、今回はBUMP OF CHICKENのギター&ボーカル、藤原基央が16歳の時に書き上げた初めての日本語曲「ガラスのブルース」が持つ「魅力とパワー」について論じていきたいと思う。

この曲のアメイジングなところは、以前の記事「ポリリズム-Perfumeに学ぶ、意志の強さと戦略の融合」で取り上げた「特筆すべきスゴイところ」を、16歳の少年が実現していることと、聴き手を納得させる高度なスキルが使われているところにある。

パフュームのポリリズムという曲をご存知だろうか? このおっさん、今度はPerfumeかよ、と思うなかれ。このポリリズムという曲に人生逆...

「ポリリズム」と「ガラスのブルース」

ポリリズムは、題名も歌詞も複数の意味がある。1回で3つの意味を発信しているスペシャルな楽曲で、複数の意味を持たせてシンクロさせることで、より強力なパワーを放つという特徴がある。

そんな稀有な名曲「ポリリズム」と同じ特徴を有しているのが、バンプオブチキンの「ガラスのブルース」

まずは曲名「ガラスのブルース」について3つの解釈を挙げていく。

  1. 「ガラスの目をした猫が歌うよ」という歌詞の通り、名前のない野良猫全般のイメージをガラスと表現した
  2. ガラスの十代「光GENJI」ガラスの少年時代「KinKi Kids」などと同様に、思春期や青春時代の美しく危うい感情をガラスと表現した
  3. 心が壊れそうだけど、前に進もうと決意した自分の心をガラスと表現した

次に歌詞について3つの解釈を挙げていく。

  1. 猫の一生をストーリー化して、強く生きる野良猫の生と死、命の尊さを表現。結果、感情移入しやすい。
  2. 作者:藤原基央の決意表明。一度否定した世界(社会)への名刺代わり。「自分はこういう人間です」という「IDカード」みたいなもの※本人談
  3. 自分のように、悩み苦しんでいる人への応援歌。「生きていることに意味がある」という力強いメッセージ

高校を早々に中退してしまった作者は、引きこもり状態になる。普通ならそのままニートに昇華していくけど、彼には音楽という才能(武器)があった。それなりに評価されていて自信もあった。

一度は完全に拒否した世界(社会)だけど、通用するかどうか分からないけど、とにかく「おれはこういう人間です!」というメッセージを発信したい。そういう思いが込められている。

溢れ出る才能とは、こういう時に使う言葉なんだろう。

さらに、ガラスのブルースは「ガラスの目をした猫」というファジーな存在を主人公にすることで、曲全体が一気にファンタジーに包まれる。

実はこれが妙手になっていて、押し付けがましさ、厚かましさ、根性論をうまく打ち消して、不思議とすんなり心に入ってくる。ファンタジーの世界では、誰しも無防備になる。ディズニーランドが大人に愛される心理に近い。ファンタジーに包まれた「汗臭くて熱いメッセージ」は女子の心にも違和感なく入り込める。

さらに、その「ファジーで不確かな存在(ガラスの目を持つ猫)」が、命をかけて聴き手に訴える「真理(生きていることに意味がある・一秒も無駄にしちゃいけない)」が、より強力に感情を揺さぶる。これは漫画や映画の名言が、私たちの心を魅了するロジックに近い。周辺の人に同じことを言われても心には響かないセリフも、映画や漫画のヒーローが言えば、不思議とすんなり心に入ってくる理屈に似ている。

メンタルブロックの原因になる先入観や思い込みが無力化するのは、思考停止している時。音楽を聴いている時、映画を観ているの時は、メンタルブロックがもろくなる。受動的でフラットな時ほど「不意に突き刺さる真理」が心を素直にさせる。

まとめ

ライブではアンコールの定番になっている。それだけ特別な曲なのだ。来てくれたみんなに「今日の楽しい時間をありがとう」と「また会おう」という2つの思いが込めれれていると何かのインタビューで言っていた。つまり、この曲は最終的にファンのための曲なのだろう。

おれみたいな人間でもがんばっている。だから、みんなもがんばろう。そんな思いを感じるのは私だけではないはず。

P.S.

そしてこの曲は、数年後に発表される名曲「k」へと繋がっていく。

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