あの人生最高の日々は、もう戻ってこない

さて、今回は「言葉の魔法」オススメの楽曲を例に紹介していきたい。

タマシイに触れる曲

タイトル、歌詞が複数の意味を纏う楽曲を当ブログでも過去に2曲紹介している。

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タイトルや歌詞に複数の意味を纏わせることで、曲は一気に説得力を増してリスナーの心に届く。

ちなみに上記の2曲は「その魔法」が高レベルで施されている神曲。

特に「ガラスのブルース」は当時16歳の少年が作った作品なので、もし偶然なら生粋のアーティスト、必然なら生粋のマーケッターである。

さて、今回紹介するのは、同じ魔法がかけられたブライアン・アダムスの名曲。

この曲はたくさんのアーティストにカバーされていて、最近ではテイラー・スウィフトがライブで弾き語るなど、世界的にも老若男女に愛されているロックナンバーである。

Summer Of ’69

邦題が「想い出のサマー」というかなり残念なタイトルになっている。

1984年に発売されたアルバム「レックレス(Reckless)」から4枚目のシングル曲として世に放たれた名曲は全米ビルボードチャート5位まで上昇した。

ちなみに1980年代といえば、マイケル・ジャクソンやプリンス、マドンナ等のスーパースターの全盛期が重なった時期。さらにハードロックも最盛期を迎えており、MTVやビルボードが最も華やかな時代だったと言っていいだろう。

そんな時代の真っ只中に発売されたブライアン・アダムスの4枚目のアルバム「レックレス」はアルバムチャートの1位に。その勢いに乗って「想い出のサマー」をはじめとしたシングルカット曲は軒並み大ヒットを記録する。

著作権の関係上、歌詞の掲載はできないので要約してみた。

あの夏に戻りたい。人生はやり直せないけど、戻りたい。

仲間とバンドを組んだあの夏。血が出るほどギターを弾いたけっけ。結局成功しなかったけど、あの時は人生成功の瞬間だった。

やりたくない仕事に絶望している時に、おまえにあった。おまえが「ずっと待っている」と言ってくれた時「この瞬間のために生きてる」って思えた。あの時は人生最高の瞬間だった。

結局オレの人生は、無駄なことに時間を費やしてきた。永遠に続くものなんてないんだって思い知らされたよ。

1969年の、あの夏に戻りたいよ。

たまに古いギターを引っ張り出して弾いてみる。「オレ、どこで間違ったのかな」なんて思いながら。

戻りたいよ。あの時に。1969年の夏に。


レックレス(30周年記念盤 デラックス・エディション)

なぜ、今も愛されるのか

誰もが経験する初めてのビール。はじめての恋。はじめての挫折。

ほろ苦くて甘酸っぱい若かりし頃を、この曲を聞く度に思い出す。そして思う、昔は良かったと。

もちろん、今が一番幸せという人もいるだろう。だけど、若かりし頃の、あの「抑えきれない衝動」や「胸を熱くする情熱」は、ある意味、若さの特権である。人はそれを「青春」と呼ぶ。

この「青春」は国境や時代を超えて誰しもが持つ「経験」であり、辛く苦しい人生において、唯一の輝きであり宝物になる。

だから、この曲を聴くたびに、人はそれぞれの宝物に触れることができる。これが今も愛される1つ目の要因。

2つ目の要因は「1969年」という年号の魔法。1969年じゃないと意味がない。

なぜなら、世界が、アメリカが、劇的に変化した年だから。

前年の1968年は大統領選挙中のロバート・ケネディ(1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディの弟)の暗殺や、あの「I Have a Dream」で有名なキング牧師の暗殺もあった。さらに、アポロ11号が月面着陸を果たしたのも1969年。泥沼化したベトナム戦争の反戦運動の高まりや、40万人以上が集まった愛と平和の祭典、ウッドストックが開催されて社会現象になった。

音楽的には、レッド・ツェッペリンやキング・クリムゾンのデビュー、ビートルズの解散問題、などなど、希望と絶望と興奮が同居する1年であったと同時に新しいアメリカの礎を築いた1年でもあった。

実際、ブライアン・アダムスは1969年は10歳なので、当然ながらバンド組んだり仕事したりしてないだろうから、意図的に1969年にしていることは容易に想像できる。

そして、最後の3つ目の要因は、曲に映画のようなストーリーがあるから。

少年がバンドで成功する夢を叶えられず、やりたくもない仕事に絶望していたけど、恋をすることで立ち直る。そして、時は過ぎ、昔を憂いながら、若かりし頃に必死に練習したあのギターを弾く。

そして思う。

あの時が人生で最高の瞬間だった、と・・・

何かを伝えたい時、ストーリーがあると分かりやすくなって感情移入しやすくなる。サラリーマンが自己紹介や自社を説明する時に、過去の経緯や歴史を語る手法と同じだ。

まとめ

記事の最初の方で、邦題の「想い出のサマー」が残念なタイトルである、と書いたのは、1969年という年号を入れなかったことで「言葉の魔法」がほとんど意味をなさなかったから。

しかし、そんな言葉の魔法を必要としないくらいメロディも歌詞も歌声も完璧な曲である。

こういう名曲が生まれる背景には、少なからず必然性がある。

「レックレス(Reckless)」が発売された1984年は、アメリカは経済的にも好調な時期であり、音楽や映画等のショービジネス界も絶頂期だった。そんな時代だからこそ、「繁栄」の礎を築いた1969年への想いは薄れることはないのだろう。


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