さて、前回の熱中症疑惑に続いて、今回も人生逆転から少し離れた内容にしたいと思う。
いつも人生という重いテーマを扱っているので、夏休みだし、続けて気分転換してもらえれば幸いである。
本当にあった怖い話で暑い夏を乗り切ろう!
今回の話は実際にあったことで、私が経験した実話。
ちなみに、霊感はないけど過去に2回だけ霊らしきものを見たことがある。今回お話しするのはそのうちの1つの体験。
43年生きてきて2回しか霊の存在を感じたことがないので、今となっては霊がいるのかどうか、疑問に思うこともある。

しかし、残留思念(物や場所に人の想いや記憶が強く残ること)は信じている。そういう「人の思い」が、なにかしらの形で空間に残ることは十分理解できる。
感受性が豊かでアンテナの感度が高い人や、偶然何かのキッカケで感度が高くなった時、霊を見たり感じたりするのではないか。そう考えている。
前置きはこの辺にして早速本題に入ろう。
【衝撃実話】少年の目的は心臓だった・・・
あの出来事があったのは、私が25歳の頃。
そう、ちょうど今頃の暑い夏だった。
当時付き合っていた彼女を助手席に乗せ、ブルーのインプレッサで奥多摩の山道を走っていた。時刻は深夜1時。なぜそんな遅い時間にそんなところを走っていたのかというと、私がナイト(ホテルの夜勤)が多い時期で昼夜逆転していたから。
当時2人とも同じホテルのフロント業務をやっていて、男の私は夜勤が多く、デートが深夜になることも珍しくなかった。
なので、私は深夜でも元気だったけど、彼女は日勤なので助手席で寝ていることが多かった。その日も彼女は助手席でスヤスヤと寝息を立てていた。
そんないつもと変わらない深夜のドライブ。当然前にも後ろにも車はいない。もちろん奥多摩の山道なので人もいない。ヘッドライトを消すと真っ暗。
いつもと変わらない景色のはず、だった。
しかし、その日は「いつもと違う景色」がそこにあった。
なにやらさっきから「光」がバックミラーに映っている、ような気がする。
まあ、あまり気にせず5分ほど経って、ふと、バックミラーを見ると、やはり見える。
「光」は1つなのでバイクのヘッドライトだろうか。
こんな深夜の山道でバイクって・・・
「あいつ、よく怖くねぇな・・・」
私は深夜の暗闇でも山道でもなく、「あのバイクを運転している人」の「精神状態」が怖かった。
横を見ると助手席の彼女は相変わらずスヤスヤ。何気なく目線をずらして助手席側のバックミラーに目をやる。
「あれ、さっきのバイク、めっちゃ近づいてきてる・・・」
よく見ると不自然なくらい車道の左側にピタっと合わせるように走っている。まるで追い抜かれる前提の原付きバイクや自転車の動線みたいだった。
「なんか、こわいなぁ」
妙な胸騒ぎがした。
「スピード上げて距離開けるか」
そう思ってアクセルを吹かす。ちょうど緩やかなカーブに差し掛かったので一気にスピードを上げた。
「どうだ。ついてこれねぇだろ」
心の中で呟く。
緩やかなカーブを曲がりきり、ストレートでさらに加速してみる。
確認するため、バックミラーを見た。
「うわー」
なんとその光は助手席のバックミラーを覆うように映っている。
そう、ものすごい勢いで車の左後方にピタッとくっついているのだ。
「こ、これは、ただ事ではない」
とはいえ、今取り乱したら事故るかもしれない。
私は冷静になるよう、心がけた。
しかし次の瞬間、バックミラーに映る「光」が、確実に車に追いついたことが感覚で分かった。
さらにバックミラーを見ると「光」はバイクのヘッドライトではなかった・・・
まさかの、自転車である。
しかも、ロードバイクのような山道を走るものではない。
ママチャリのような形をしている。
そして、乗っているのは少年。小学校5、6年くらいだろうか。
顔は・
怒っている・・
立ち漕ぎしている・・・
顔だけじゃなく、全身が光っている・・・
時速60キロで走るママチャリ。
深夜1時の山道。
しかも乗っているのは少年。
「この世のものではない」と理解するのに、そう時間はかからなかった。
そしてスローモーションのように少年は助手席側のバックミラーに吸い込まれていく。
「なにが起こるんだ?」
そう思った瞬間、少年はほうき星のような光になり、助手席の窓をすり抜けて私の心臓に侵入してきた。
私は思わずブレーキを強く踏んだ。
恐怖のあまり声は出ない。ただ顔が自分でも分かるくらい引きつっていた。
そして、心臓が押し込まれるようで苦しいし、息もできない。
「ぐあぁーー」
布団を蹴り上げて飛び起きた。
「ここはどこだ。あいつはどこだ。オレの心臓は!!!」
ここはナイト(夜勤)の仮眠室。
せんべい布団が6枚引いてあって申し訳ない程度にパーテーションで仕切られている。もともと大浴場の更衣室だったスペースを改造して造られているのでいつもジメッとしている。
もちろん、今いるのは私1人だけ。
「なんだ、夢か。それにしてもずいぶんリアルな夢だったな」
時計は午前3時。あと2時間寝れる。
心臓が締め付けられている感覚を残して私はトイレに向かった。用を足して鏡を見た瞬間、私は凍りついた。
だって、鏡に映る自分の左横に「彼」の顔らしきものが。
そして、その顔は、じーっと心臓を睨んでいた。
完
終わりに
これ、ホントの話で、少年の顔も鮮明に覚えている。ちなみに私は心臓が悪いわけでも病気がちなわけでもない。
なので、なぜあの時、彼が心臓に執着していたのか不思議でしょうがない。
とはいえ、心臓の締め付けや顔の引きつりは今でも身体が覚えている。
でも、一番忘れられないのは彼の怒りに満ちた顔。
ねぇ、なんでそんなに怒ってるの?
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